岡山大学 工学部 機械システム系 ロボティクス・知能システムコース(岡山大学大学院 ヘルスシステム統合科学研究科)インタフェースシステム学研究室


研究

本研究室では,人間とコンピュータの共存を目指し,ロボットシステムならびにヒューマンインターフェースに関する研究教育を行っています.具体的な研究項目としては,以下のものが挙げられます.

_ プラント安全運転や設計支援に関する研究

Study of plants design supports and safe operations

 異常状態が発生しているプラントにおいての対応能力は運転員によって異なり,新人運転員が効率よく対応能力を身に着けさせる必要があるため,そのためのプラント運転訓練方法を検討している.また,プラント運転操作において違反行為が生じやすい操作についての検討や,プラントでの緊急時対応手順をサポートするシステムの開発をしている. また,プラントでは過去の設計事例を参考に設計することが多いため,その過去の設計情報をうまく活用しプラントの設計を支援する研究も進めている.

_ プラント運転スキルの抽出と伝承に関する研究

Study on Extraction and Succession of Skill in Plant Operations

 原子力発電プラントのような非常に大きなエネルギーを扱うプラントは,事故が発生しないように様々な防護設備が設置されている.さらに万が一事故が発生してしまった場合も,プラントを安全な状態に移行させるための設備とそれを行う手順が整備され,運転員の訓練も行われている.それでもあらゆる事故に対応することは難しく,設計時や改修時に想定していなかった事故が発生してしまうことがある.想定外の事故が発生したときに運転員に緊急時の対応手順をプラント状況に応じて生成して示すことができれば,過酷事故へ発展することを防ぎ,プラント運転員の柔軟な対応をサポートできると考えられる. 本研究では対応操作検討部分を対応手順自動生成システム開発によって補助することを目的とする. 本研究で, Multilevel Flow Modeling (MFM)と呼ばれる機能モデリングの一手法を用いて作成したMFMモデルや対応手順自動導出アルゴリズムを用いて,いくつかのアクシデントマネジメント(過酷事故の際にその影響緩和に必要な手順を準備したもの)を例題に,対応手順を導出した.導出した手順の実行効果は,事故時の対応目標達成に向けて効果があると定性的評価によりに確認された.

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_ 人狼ゲームを題材とした人工知能研究

Study on artificial intelligence in werewolf game

これまで人工知能研究ではチェスや囲碁,将棋などのゲームを題材とし,人工知能がプロ棋士に勝利するなど一定の成果をあげてきた.そして,近年コミュニケーションや情報の不完全性を含む新しい題材として人狼ゲームが注目されている.人狼ゲームは村人陣営と人狼陣営に分かれ議論の中で推理や演技を駆使して生き残りを争うゲームである.人狼ゲームにおいて人工知能が人間に勝つことはより人間に近い思考が実現できると考えられる.

人狼ゲームを題材とした研究の方向性として,人工知能に関する研究とゲームの戦略に関する研究などがある.本研究室では,人狼ゲームにおける議論の過程において人間もしくは人工知能らしい要素の分析や,人狼だと怪しまれる行為の分析などの研究が行われている.具体的な研究の一例として,人間と人工知能を交えて選択回答式の人狼ゲームを行い,どのプレイヤーが人工知能であるかを人間が看破する際の手がかりを実験的に分析した.人工知能の存在を秘匿した場合(実験1),仄めかした場合(実験2),明かした場合(実験3)の3つの条件で8プレイヤーによるゲームをそれぞれ4回ずつ行ったところ,実験3,2,1の順で看破率が高かった.実験間の違いを分析したところ,周囲の発言傾向からの逸脱や無反応を人工知能看破の手掛かりとしていたと考察された.人狼ゲームを題材とした研究はまだ発展途上にあり,未知の領域が多い.この結果やその他の研究結果など様々なアプローチを統合させることで人間らしい人工知能の実現が期待される.

_ 医療支援に関する研究

  • カルテの構造化と電子化による医療支援

Study on the medical support systemst

近年,医療の高度化や老齢人口の増加に伴い医療・福祉分野への工学の貢献の需要は高まっています.本研究室では,岡山大学病院の医師らと共同で医療現場において問題となっている課題にヒューマン・マシン・インタフェース技術など工学的な立場からアプローチしています.

  • バーチャルリアリティ鏡療法システムによる上肢慢性疼痛治療支援

Upper extremity chronic pain Virtual Reality-based Mirror Visual Feedback System(VR-MVF)

骨折などの外傷や四肢の切断などによる神経損傷が治癒した後にも,治癒箇所において治まることのない痛みである慢性疼痛が生じる複合性教区所疼痛症候群(Complex Regional Pain Syndrome:CRPS)や幻肢痛といった症状がある.これらの慢性疼痛に対する治療法としてVirtual Reality技術を利用したVR鏡療法システム(Virtual Reality-based Mirror Visual Feedback Therapy)や,自宅での治療を目的とした簡易型VR鏡療法システムを作成した.現在は岡山大学病院ペインセンターや患者宅などで稼働している. 今後は,幻肢痛やCRPS患者のリハビリテーション治療に対するモチベーションを維持することを目的としたインタフェース実装などへの発展が考えられる.

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_ ヘビ型ロボットに関する研究

Study on Snake like Robots

 自然界における蛇は単純な形態でありながら,移動するときは脚,環境に巻きつくときは腕,獲物を捕らえるときは手というように臨機応変に機能を果たす.この生物の蛇のメカニズムを工学的に応用すれば,汎用的な機械システムを構築できる可能性がある.例えば,狭く複雑な空間への進入,物体への巻き付き動作など,従来のロボットにはない柔軟な動作が可能になると期待されている.本研究室では,複数のユニットを直列に多数連結した冗長システムとしてヘビ型ロボットをモデル化し,構成論的な解析や実験を様々な切り口で行っている.

  • 3次元空間を運動するヘビ型ロボット

Development of a snake-like robot moving in a 3-dimensional space

これまでの研究により,蛇は足がないのになぜ移動できるのかが工学的に解明されてきた.生物の蛇は移動する際に体幹に沿ってエッジを立てることにより進行方向とそれに垂直な方向との摩擦の差を生じさせ,それを利用して横うねり推進をしている. これまでに,ヘビ型ロボットで,蛇の横うねりによる推進のみならず,サイドワインディング推進や,縦波を伝播する尺取虫のような推進,さらにはラテラルローリングと呼ばれる生物の蛇では観察されないような特殊な 推進による移動が実現されている.しかしながら,従来のヘビ型ロボットは多用な移動形態をもつものの,それらの移動は2次元平面上に限られていた.生物の蛇は木に登ることができ,3次元の空間を移動することがで きる.そこで,本研究では従来のヘビ型ロボットのもつ多様な移動形態に加え,円柱に巻きついて登る移動形態(cylinder climbing) を実現するヘビ型ロボットを開発し,ヘビ型ロボットの移動空間を3次元に拡張することを目指している.  こうして実現されたヘビ型ロボットは,災害現場などに存在する狭隘な空間や発電所の配管設備の点検などで役立つことが期待されている.

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_ 極限移動ロボットに関する研究

Study on the robots which move in harsh environment

本研究室では災害が発生した際に現場の状況把握や被災者を捜索することを目的としたレスキューロボットや、老朽化した橋梁を点検するためのロボットマニピュレータといった、極限環境において人間に代わって活躍するロボットの研究開発を進めています。

  • 移動ロボットの遠隔操作システムの開発

レスキューロボットを人が操作する場合は、操作者が近くにおらず、離れたところから遠隔で操作することが多いです。遠隔操作をするうえでは、ロボット周囲の環境を把握することは非常に重要であり、近年では特に、周囲との距離感が把握でき、暗闇でも使えるという利点からLRFが多く用いられています。本研究では、LRF取り付け部に揺動機構を採用し、新たな三次元レーザスキャナを開発することで、周囲の環境データを三次元で把握することが出来るようになっています。 また表示デバイスとしてヘッドマウントディスプレイを導入し、広視野角のスキャナで取得した三次元データを表示するのに適したインタフェースの構築を行っています。本研究では、特にレスキューロボットの遠隔操作に関する要素技術の研究を行っています。

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Last-modified: 2020-06-22 (月) 16:05:31